音楽制作にあたって、ミックスやマスタリングなど必須の作業の中で登場するms処理。
完成度の高い音楽を製作するためには、このms処理が大きな役割を果たしてくれます。
今回は、ms処理の解説やおすすめプラグインについて紹介します。
- ms処理とは
- ms処理におすすめのプラグイン4選
- ms処理によるメリット
- ms処理の活用タイミング
- ms処理の活用方法
Contents
ms処理とは
ms処理は、ステレオ音源を「Mid(中央)」と「Side(横)」との2つに分けて、処理を行う方法です。
平たく言うと、Midは正面から聞こえるような音、Sideは左右に広がって聞こえるような音のイメージです。
1つのステレオ音源を分離させて、音量・音圧・音質などをイコライズしていきます。
ms処理を実行できる専用のプラグインがいくつかあり、ミキシングなどで用いるDAW(Digital Audio Workstation)の各トラックに挿入することで利用できます。
ms処理におすすめのプラグイン4選
- Voxengo「MSED」(無料)
- Waves「Center」
- iZotope「Ozone」
- Fabfilter「Pro-Q3」
ms処理におすすめのプラグイン4選
Voxengo「MSED」(無料)
引用元:公式サイト
「MSED」は、「Voxengo」から販売されているプラグインです。
多くのプラグインが有料で販売されているなか、無料でms処理ができる貴重な製品。
「音楽制作に向けて多数の機材やソフトを導入して、予算がきつい・・・」、などといったお金の問題を解決できます。
また、MSEDの特徴はそれぞれのチャンネルもプラグインを挿入できることでしょう。
ms処理におすすめのプラグイン4選
Waves「Center」
引用元:公式サイト
「Center」は、プラグイン販売の大手である「Waves」から販売されているプラグインです。
2つのシンプルなパラメーターでms処理が行えるため、知識や理解が深くなくても挑める便利な製品。
1ヵ月3630円、1年間で36300円と安価なプラグインなので、お財布のひもも気にならないでしょう。
ms処理を気軽に体験してみたい方におすすめできます。
ms処理におすすめのプラグイン4選
iZotope「Ozone」
引用元:公式サイト
「Ozone」は、「iZotope」から販売されているプラグインです。
EQ・コンプどちらもms処理が可能で、マスタリングも行えるため重宝されています。
また、細かい微調整も行いやすく、本格的なマスタリングも可能。
AIを用いて自動でマスタリングできる機能なども搭載しており、新たな技術も欠かせない製品です。
ms処理におすすめのプラグイン4選
Fabfilter「Pro-Q3」
引用元:公式サイト
「Pro-Q3」は、「Fabfilter」から販売されているプラグインです。
シンプルなデザインとマスタリングも行えるため、定番のプラグイン。
また、多機能・高性能で上級者向けともいえますが、デザインや操作性が良く初心者でも扱えることができるでしょう。
本格的に音楽制作に挑みたい方におすすめの製品でしょう。
ms処理によるメリット
それでは、ms処理によるメリットについて紹介していきます。
ms処理によるメリット
ローエンドの処理
ms処理を行うことで、ローエンドの処理ができます。
ミキシングの基本として、低音域がMidに寄っており、高音域になるにつれSideに広げます。
そこで、ms処理でベースやドラムなどローエンドの音をMidに集めることで、引き締まった音楽にできます。
80~100Hz以下のSide成分をカットしていくと、効果的に処理が行えるでしょう。
ms処理によるメリット
トラックの分離感を与える
ms処理を行うことで、トラックの分離感を与えることができます。
高音域や中高音域を担うボーカルやギターなどの主旋律はSideに寄っています。
そこで、Side成分をブーストすることでより主役を目立たせられるようになります。
また、互いの楽器の役割分担にも貢献でき、1つのトラックにおいて分離感と空間の広がりを感じさせられます。
ms処理によるメリット
ステレオの広がりを出せる
ms処理を行うことで、ステレオの広がりを出せることができます。
Side成分をブーストさせ、MId成分を控えめにすることで左右への音の広がりを演出できます。
人間の耳に聞こえやすい高音域をブーストさせることで、外側の音に注目させることができているのでしょう。
ms処理の活用タイミング
それでは、ms処理の活用タイミングについて紹介していきます。
当然、音楽制作に関するタイミングで作業が行われます。
ミックス
ミックスの作業時に、ms処理を行えます。
ミックスとは、複数に分けられている音声トラックを1つのトラックをまとめる作業です。
ミックスの際に、ボーカルが他の楽器に埋もれさせないようにイコライズすることがよくあります。
その際にms処理を行うことで、他の楽器の帯域を失うことなくボーカルのブーストが可能です。
マスタリング
マスタリングの作業時に、ms処理を行えます。
マスタリングとは、ミックスされた音源を調整する最後の作業で、音量・音圧・音質を微調整するものです。
ミックスによって作り上げられた2mixのステレオ音源は各トラックごとの調整が不可能なので、大きな変更はできません。
そこで、ミックスした音源を崩さないように、MId成分をコンプするなどして空間の広がりを作り出せます。
ms処理の活用方法
それでは、ms処理の活用方法について紹介していきます。
適切な処理を行うことで、いくつもの活用方法が生まれてきます。
- ボーカルを目立たせる
- キックを引き締める
- ドラムのオーバーヘッドに活用する
- 音の濁りを消去する
ms処理の活用方法
①ボーカルを目立たせる
ms処理を行うことで、ボーカルの音抜けや広がりを目立たせることができます。
複数のトラックをミックスさせた際、どうしてもボーカルが楽器の音に埋もれてしまうことが良くあります。
そこで、楽器隊のMid成分をカットすることで、中音域が主なボーカルの音抜けをもたせることができるでしょう。
Mid成分の800Hz~4kHz周辺をカットしていくと、効果的な処理が狙えるでしょう。
また、ダイナミックEQを使用してボーカル再生時のみ楽器隊のMid成分をカットする方法も可能です。
専用のプラグインが必要になるため、上記のやり方を行ってみたい方のみ試してみるとよいでしょう。
ms処理の活用方法
②キックを引き締める
ms処理を行うことで、ドラムのキックを引き締めることができます。
キックとは、バスドラムなどの最も低音域を支える音を出すドラムです。
ほとんどの音楽において拍のアクセントやリズムキープに最も重要な箇所ですが、モノラルであるケースが多いです。
そのため、100Hz以下のSide成分をカットして、ステレオ帯からなくす意識で行うとよいでしょう。
ms処理の活用方法
③ドラムのオーバーヘッドに活用する
ms処理を行うことで、ドラムの鳴りや広がりを目立たせることができます。
Mid成分の高域を持ち上げることで部屋鳴り感を与えることができ、立体感のある音楽に変えることができます。
高音域のほうが耳につきやすいですが、音抜けや空間を意識させるためには中音域をブーストさせる方が効果的な場合が多いでしょう。
ms処理の活用方法
④音の濁りを消去する
ms処理を行うことで、ミックスの音の濁りを消去することができます。
まれに、ステレオとモノラルで同じ音源を聴き比べるとモノラルの場合だけ濁るケースがあります。
そこで、低域のSide成分をカットしたり、リバーブ成分が目立つ帯域のSide成分をカットしたりしてステレオ帯域を修正するとよいでしょう。
ms処理のやりすぎは禁物!
ms処理をやりすぎるデメリットは、極端な調整はかえって全体のバランスを損ねてしまうことです。
ms処理は全体のバランスを崩さないように音源を調整する処理です。
そのため、必ずしもms処理を起こさないといけないわけではありません。
ms処理では、Mid成分とSide成分に対してのみ対応できますので、得意不得意もあります。
音源の品質を上げていくのはいいことですが、最後の味付けで台無しになっては意味がありませんよね。
したがって、ms処理は最後の微調整程度に留めておくとよいかもしれませんね。
ms処理についてまとめ
ms処理は、ステレオ音源を「Mid(中央)」と「Side(横)」との2つに分けて、処理を行う方法です。
ms処理できるプラグインを活用することで、ボーカルを目立たせたり、キックを引き締めたり様々な音楽の微調整が可能です。
また、無料で扱えるプラグインもありますので、ms処理に興味がある方はプラグインを手に入れてみましょう。
また、ms処理をやりすぎるデメリットは、極端な調整はかえって全体のバランスを損ねてしまうことです。
全体のミックスを大きく変えないように注意して作業を行ってください。